・またね

ils09.gif (15857 バイト)(飯田和敏)

『巨人のドシン』は年内完成を目指してがんばっています。毎日が『巨人のドシン』。寝ても覚めても『巨人のドシン』。明けても暮れても『巨人のドシン』。

昨年の制作発表からずいぶん時間が立ってしまいました。画面写真を一枚も発表していないので「全然進んでないんじゃないの?」とか「ワインばっかり飲んでんだろ」などといぶかしがっている声も聞こえてくる今日このごろですが、どっこい、僕はお酒を全然飲めないのだ。だから、ちゃんと仕事してるよ。

実はかなり前から巨人は画面内でムクムクと動いています。それ自体はなかなかいい感じ。以前だったらこの段階で「やったね!」と思って大満足してたんだけど、今回の我々はちと意気込みが違うのだ。

『巨人のドシン』の制作に入る前に僕たちは98年版・優れたゲームの条件を、「みんながびっくりしちゃうインパクト」、「自然で心地好い操作性」、「嫌になるほどハマっちゃうゲーム性」が備わっていることと考えました。そして、それをしっかりキチンと仕上げようと決意しました。飛び道具だけに頼らない足腰のしっかりしたゲームを作ろうということです。それが出来るかどうかはわからないけど、とにかくがんばり中です。

さて、僕は来週からE3に行ってきます。N64の新作ソフトが沢山遊べるので楽しみです。でも、DDの出品は無くてかなり残念です。どうなるのかなーDD。

他にもE3では色々な計画があるのですが(『ゴジラ』を見よう!とか、『Quake2』世界大会を見学!とか)一番楽しみなのは『Age of empire』の作者との対談です。これはインターネット・ゲームマガジン『GAMEjapan』がセッテイングしてくれました。『AOE』は目下僕が一番ハマっているゲームです。ここ10年で最大級のハマリです。はっきり言って仕事が出来ません。困ってます。でもやっちゃう。「あー、どんどん時間が過ぎていく、まずいなー」と思っても、やる。「あ、朝になっちゃた。疲れたなー」と思っても、やる。自己嫌悪に陥りつつも、やりまくり。中毒です。社会人としてはギリギリの綱渡り。遊びというよりは、むしろ「旅」に近いかも。自分の意識の中を深く沈降していく心の旅。言語や論理に立ち上がる以前の抽象的な意識との戯れ。『ドシン』もそうした「旅の出来るゲーム」にしたいよなぁ、と思いつつ今夜も狂ったようにマウスをクリック、クリック。

(柴田賀盆)

ゲーム製作だけに限ったことではないのですが、何事も最後までていねいにがんばるというのは大変なことです。昔、学生だったころ、試験勉強を徹夜でやるじょーと、いきごんだものの、夜明けが近づくにつれてどうでもよくなって、結局最後までやりとげられなかった経験が頭をよぎります。がんばり・根気・元気が苦手なオイラ、人生のほかのことはダメでも、せめて『巨人のドシン』くらい、がんばろうではないか、そんなふうに思っているのだ。と、いうわけで、今度パーラムの近くにひっこしまーす。今までは、12時ごろの終電だったけれど、1時が終電になるんだね。終わりはなるたけ後にのびたほうがいいのであった…

終わりといえば、『巨人のドシン』。このゲームは終わりのないゲームです。

終わりは遊んでもらう人自身に決めてもらおうと思ってます。すきなマンガの最終回とか、深夜放送の最終回とかって、向こうから勝手にやってきて、みょーに切ない、そんなトラウマがオイラ達にはあるのでしょうか(あるのだよ)。

ゲームマシンのロムカセットって、中身がきえてしまうことはないから、永遠な感じがして、いいよなぁと昔考えたのを思い出しました。でもこれは見落としがあって、カセット内のデータは確かに長持ちするけれど、遊ぶマシンがね。どんどん変わっていくので、結果として短命なのだなぁ、と、これはS社の新しいマシンの発表会を見にいった、昨日の感想でした。そんな流動的な世界でゲームを作っていくのもまたおもろいし、これが人生ってヤツなのだ。 

(飯田和敏)

さて、この連載、実は今回でおしまいなのです。始めあれば終わりあり。応援してくれた読者のみなさんどうもありがとう。送ってくれた沢山のプリクラやお手紙はとっても大切な宝物です。みんなの心のこもった励ましの言葉はすぐにダメになりそうになってしまう弱っちい僕たちをいつも奮い立たせてくれます。そんな、すてきな出会いを用意してくれた電撃N64の編集部にも感謝。

それではみなさん、『巨人のドシン』でお会いしましょう。

(電撃NINTENDO64 1998年8月号

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