・次世代機はいびつなコンピューター?

ils03.gif (15456 バイト)(飯田和敏)

今月もやって来ましたワビンガボンの「それいけ!4分刈り6姉妹」のコーナーです(嘘)。学生さんは夏休みも終わって憂鬱な2学期の到来ですね。がんばれ。僕たちはこれでも立派な大人だから、試験も学校も無いので気楽なもんさ。その代わり、マスターアップというのがあります。長い間、あーでもない、こーでもない、とネチネチやってたゲーム作りが完全に終わってしまう日の事です。そしてその時、我々ゲーム制作者に去来する想いは複雑なもので、モノを作り上げた喜びと同時にまるで世界の終末に立ち会うかの如き寂寥感が襲って来ます。ゲームクリエイターを目指す諸君はそこんとこ要注意です。さて、読者さんからのお便りを紹介しましょう。

「64DDにはがんばってもらいたいので、考えました。とても人間臭いゲームはどうでしょう?キャラクターをほっといたら勝手に変な所をウロウロしたり、信頼を失うようなことをしたら、どこかへ行ってしまう、みたいなゲームです。よろしく。兵庫県 西之虎」

なるほど。人工知能モノですね。こういったゲームこそ64DDに最適でしょう。と、言うのは最大のウリである「書換え」機能をフルに生かすことが出来るからです。ご存知の通り、64DDのディスクは全容量の半分を書換えることが可能なので、それを利用すれば、キャラクターとプレイヤーのコミュニケーションの大半を記録しておけるわけです。これは、従来までの単なる断片の記録とは質が違う。例えば、マリオペイントならば、作業の結果だけでは無く、過程そのものを保存出来る(マリオペイント64がこうした仕様になるかは不明です)訳で、言ってみればプレイヤーの“生きた証”がゲームの中に封印されるということなのです。でも、これってPCでは当たり前の事なんですわ。2人が同時にウィンドウズをインストールして使い始める。最初は同じだけれど、1年もすればデスクトップはそれぞれの使用者にとって最適な状態にカスタマイズされ、全然違うものになっている筈。つまり、コンピューターを使うということは知らずのうちに使用者の意識がモデル化されていくということなのです。こういう道具ってコンピューター以外にはありません。おもろいよね。そして、ゲーム専用とはいえ、家庭用ゲーム機だってれっきとしたコンピューターだ。それにしてはCD−ROM等の読み込み関係だけが異常に充実している。これでは、コンピューターとしてあまりにもいびつな存在だ、っていうか、快楽の片方をばっさり切り落としているんだから、もったいないったらありゃしない。だから、N64DDはイイのだ、よ、ね、ガボちゃん。

(柴田賀盆)

「よ、ね」というとこにワビちゃんのためらいが見えますね。今回はいつもの仲良しムードとは一転、辛口。使ってる内に、ドンドン自分だけのものになってくのがキモチいって、読者ちゃん、共感できますか? 例えば携帯電話ね(モチ、PHSでも)。人によって、プリクラシールをベタベタはったり、アンテナの先っちょに光るウルトラマンくっつけたり、ついには、オリジナルカラーなんてペイントしちゃったりしてるらしいけど、オイラね、そういうの全然キライなんですわ。オイラの電話、ツルツル。ヒモだってつけてないザンス。だって、自分のへたっぴぃな絵や、文字なんかで平和が乱されるより、「す」のままの方が絶対いいもんね!イーだ!学生の読者ちゃんなら、よくわかってくれると思うけど、新学期にノートおろしてもらうよね? 始めのうちってさ、字なんかマス目くっきり、ページもピッチリで、それは丁寧に丁寧に書いたりしなかった?で、ある日ついに、いいかげんに書いてしまった日の虚脱感…。あの感触ほど「ワタシってキライ…」と思うことはなかったね。だからオイラは、うっかりカスタマイズできて、へたっぴな自分のメモリアルができちゃうなんて、チョーきらいなのさ。あ、でも、64DDでゲーム作らないってことじゃなくてね、そんなオイラみたいなキッズでも楽しく遊べるような、「オレのものになる」ゲームを作って、あの虚脱感を味わわぬよーにしてーと思ってます!読者ちゃんは、「カスタマイズ好きスキ!」ですか?「カスタマイズってキライ…」ですか?どっちか教えてね。

(飯田和敏)

いやぁ、ガボちんよぉ、違うって。気持ちよければOKなんてちゃらい時代は、泡と共に去った!「書き換え/カスタマイズ」の真の狙いは、ガボちんの危惧そのものにある。“知りたくなかったかもしれない自分の姿を目の当たりにしてしまい虚脱っち”まさにソコ。我々が善く生きようと決意し、何かイイ事を始めるのってそういう時でしょ。つまり、“無知の知”“汝自信を知れ”という哲学の基本中の基本を遊ぶ(「学ぶ」じゃなくて、「遊ぶ」んだよ!)ことが出来るゲームを作れるのだ。ゲーム万歳って叫びたくなるよ。

(電撃NINTENDO64 1997年11月号)

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